Works事例紹介
断熱性能を高める健康省エネリフォームで快適な暮らしを実現
取材日:2023年8月7日

株式会社U建築
本記事は、長野県がゼロエネ住宅建設における事業者の方々の取り組みを取材したものです。
長野県ではゼロカーボンの実現に向け、2030年度までに全ての新築住宅のZEH化、2050年度までに住宅ストック平均でゼロカーボン化を目指しています。ZEH(ネット•ゼロ•エネルギー•ハウス)とは「断熱性能」を高め、高効率な設備機器を導入することで省エネルギー化し、再生可能エネルギーを導入することで、エネルギー使用量を実質ゼロにした住宅です。
早い時期から新築住宅の断熱性能向上に力を入れてきた株式会社U建築は、ZEHビルダーの登録事業社としてZEHの普及率目標を独自に定め、2022年度の新築住宅での普及率は67%に達しています。
また数年前からはリフォーム分野でもさらなる断熱性能の向上に力を入れていて、リフォームにおいてもZEH基準をクリアできるように努めています。長野県では、断熱性能の向上を目的とした信州健康ゼロエネ住宅指針に適合する断熱改修(「ZEH化リフォーム」や「健康省エネリフォーム」)に対しての助成金制度があり、対応可能なお客様に対しては、積極的に活用しています。
省エネルギー住宅に必要な断熱性能について
これまで住宅の断熱性能向上に力を入れてきたというU建築。夏の暑さや、冬の寒さに影響する断熱性能については、「断熱等性能等級」として、その性能を分かりやすくUA値(外皮平均熱貫流率)などの数値によって、省エネ法の地域区分ごとに規定されています。UA値が低いほど断熱性能は高くなり、現在7が最高等級となっています。
U建築で扱う住宅の断熱性能について塩澤さんが説明してくださいました。
「当社でもリフォームは断熱等性能等級でいうと、現行の省エネ基準『4』はクリアしていてZEH基準相当の『5』を目指しています。又、そして新築ではさらに高水準の信州健康ゼロエネ住宅の推奨基準である『6』を目指してやっています」。
健康省エネリフォームについて
U建築では、県のリフォーム助成金を活用した、浴室と脱衣室の断熱改修を伴う「健康省エネリフォーム」を行っており、その効果を塩澤さんに伺いました。
「当社は主に飯田エリアの工事が多いのですが、飯田市は12月の最低平均気温はマイナス5.4度で、1月はマイナス8.8度と寒い地域です。そのため浴室リフォームの要望で一番多いのは『昔ながらのタイルの浴室が寒いのでリフォームしたい』で、その次に『段差をなくしてバリアフリーにしたい』の順番です。」と塩澤さん。
昔ながらのタイルの浴室は断熱性能が低く、熱が伝わりやすく逃げやすいので、特に冬は寒いです。
そこでタイル貼りの浴室から、ユニットバスへのリフォームをご提案しています。解体後、あらかじめ天井・壁へ断熱材を施した浴室スペースへ防水性の高い素材で浴槽・天井・床・壁などがユニット化したバスルームを、現地に運んで組み立てます。浴室の壁や天井、床の断熱改修をすることで冬の寒さが改善されるのです。
リフォーム後は「入るときに冷やっとしない」「お湯が冷めにくい」「今までより湯船に浸かりやすい」「お湯が少なくて済む」「バリアフリーで段差がなく使いやすい」と皆さん満足されるそう。
また、その浴室の延長で脱衣所のリフォームも併せて希望される方が多いといいます。
「浴室だけ暖かくても脱衣所が寒ければ、ヒートショックを起こすなど、体に影響がある為、脱衣所の断熱リフォームもまとめて行うことをお勧めします。」と塩澤さん。
浴室と脱衣室を一体的に断熱リフォームすることで、健康にも省エネにも効果があります。
1階の丸ごとリフォームについて
使い勝手のよい空間にしたいというご希望で浴室や脱衣所からLDKや寝室といった1階丸ごとリフォームを希望される方も多いと塩澤さんは話します。
「例えば、水まわりのリフォームだけではなく、生活導線を考えて寝室を今までとは別の場所へ移動したいというお客さまもいらっしゃいます。建物全体や1階全面を改修する大規模なリノベーションをご希望の場合には、断熱性能向上のご提案として、天井材・壁材・床材を全てめくって骨組みだけにした(スケルトンリフォーム)上で、性能の高い断熱材を入れ直す健康省エネリフォームをご提案しています。
このような大規模な改修の場合は、外壁、床、屋根、その他の開口部分の外皮性能を高めるという意味で、U建築では、新築でのノウハウを生かして、リフォームでもZEH基準以上を標準仕様とできるように取り組んでいます。
断熱性能を高めたリフォームのメリット「健康面」
断熱性能を高めたリフォームを行うことで、快適な室内環境での生活ができるようになる上、他にもメリットがあります。
「お風呂だけではなく、生活スペースのLDKや廊下、寝室まで含めた家全体の断熱性能を高くすることで、特に冬場、体への負担が掛かりにくくすることが大事ですね。」と塩澤さん。
断熱効果が上がり、部屋と部屋との温度差が無くなることで暖かい空間から寒い空間へ冷気が移動することがなくなるため、血圧が安定し、ヒートショック予防にもなるそうです。
断熱性能を高めたリフォームのメリット「光熱費」
さらに、断熱性能が高くなると光熱費を安く抑えられることもメリットの一つ、と塩澤さんが教えてくれました。
「断熱性能が高くなると熱が逃げにくくなるので、冷暖房をつけっぱなしにしなくてよくなる時間があります。断熱性が低いとずっとつけっぱなしなので消費量は多くなり、光熱費もかかるようになります。
また他にも冬場、寒いとお湯をよく使うようになり、手を洗う、食器を洗う時などに、温度が高めになりがちです。逆に断熱性能が高く部屋が暖かいと、水で洗うなど給湯器の稼働率が違ってくるので光熱費にも影響します」。
省エネルギーで快適な暮らしを実現できる「ZEH化」や「信州健康ゼロエネ住宅」。U建築では、ZEHの普及率を上げるとともに、さらに「信州健康ゼロエネ住宅」指針に適合した新築やリフォームの高断熱化推進にも努めることで、住宅での化石燃料によるエネルギー消費量を抑え、温暖化防止にも向けていきたいと考えています。
【会社情報】
株式会社U建築
長野県飯田市座光寺603-1 電話:0265-52-2570(代表)
https://www.u-kenchiku.com/(別ウィンドウで外部サイトが開きます)
参考資料 (2023年10月現在の情報)
引用:国交省の評価方法基準 平成13年国土交通省告示第1347号
(国交省が定める断熱等性能等級。左の等級の列は数字が高いほど断熱性能が高くなり、7が最高等級。横列の1〜7は省エネ法の地域区分。)
省エネ法の地域区分については、日本各地で温度環境などが異なるため、1〜7の地域ごとに分けられています。長野県は2~5地域に区分されます。例えば、伊那市や駒ヶ根市は4地域、飯田市は5地域というように決まっていて、5地域の飯田市で等級5(ZEH基準相当)の断熱性能にする場合のUA値は0.60になります。
これまでは断熱等性能等級4(平成28年度基準相当)が最高基準でしたが、国としてもゼロカーボン実現に向け、住宅の高断熱化を進めていく取組の一つとして、2022年4月に等級5(ZEH基準相当)、2022年10月に等級6、7を新設しました。