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日本の伝統技能と県産木材にこだわる「信州健康ゼロエネ住宅」

取材日:

日本の伝統技能と県産木材にこだわる「信州健康ゼロエネ住宅」
新築 北信
施工会社

有限会社 寺島工務店

本記事は、長野県が信州健康ゼロエネ住宅建設における事業者の方々の取り組みを取材したものです。

長野市に本社と木材の加工所を構える寺島工務店。住まい手と建物の健康を考え、県産木材や自然素材にこだわった家づくりが特徴です。また、これまで数多くの社寺建築を手掛けてきた職人による瓦葺(かわらぶ)き屋根や左官仕上げ壁、木製建具には日本の伝統技能が生かされています。

そして高性能な断熱材を使用しソーラーパネルを搭載することで、年間のエネルギー使用量実質ゼロを目指した家は「信州健康ゼロエネ住宅」基準にも適合します。

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(「信州健康ゼロエネ住宅」のメリットについてお話しいただいた有限会社寺島工務店の専務取締役•荒井さん(左)と営業の原さん(右))

 

県産木材を使用し地産地消 

寺島工務店ではこれまで木造の社寺建築や住宅建築を数多く手掛けてきました。その際、使用する木材の多くは県産木材を用いています。専務の荒井さんと営業の原さんに県産木材にこだわる理由を伺いました。

「『信州健康ゼロエネ住宅』では県産木材の使用を要件としています。私たちも、地産地消を考え、県産木材を多く使うことで地元の産業も潤います。また、その地域の気候•風土で育った木材を使う方がその地域になじんでいることもあり、建てるときに狂いも少ないです。長持ちする家を考えると、住宅にとって湿気は大敵ですが、木材には空気中の水分を吸ったり、吐いたりして室内を程よい湿度に保ったり、結露やカビの発生を抑制する効果もあるので、建物を健康な状態に保つことができます。」と荒井さんは県産木材を使用する理由を話します。

このような考えで寺島工務店では南信州•根羽村の一山を所有するだけでなく、根羽村森林組合と業務提携し、その山から切り出されたスギやヒノキを一括で仕入れています。

そして、一括購入することで安定した供給や加工面でもメリットがあり、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の排出を抑制することにもつながると原さんは話します。

「一本一本仕入れるとコスト的に合わないこともありますが、一括で買うことで木材を安定して供給することができますし、同じ県内なので輸送コストや二酸化炭素の排出も抑えることができます。また加工もこちらで行っているので、ここの部分をここに使ってということもある程度、把握することができ、木材をむだなく使うことができます。」

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(床材は根羽村産のヒノキを使用。ヒノキに含まれる天然成分には抗菌•防虫(シロアリ、ダニ)•防臭などの効果がある。)

 

住まい手、建物、環境にやさしい家づくり

寺島工務店では「住む人の健康」、「建物の健康」、「地球の健康」この3つを大事にして長持ちする家づくりを行っています。
イギリスやアメリカの住宅に比べ、日本の住宅の平均寿命が短いというデータ(※国土交通省:平成8年建設白書 第2章 経済・社会状況の変化と住生活へのインパクト参照)もあり、同社ではその原因のひとつをビニールクロスで壁を覆い住宅を高気密化したことで結露が起こりやすくなり、構造材などの木材の蒸れや腐れにつながるからだと考えています。

そこで同社では、湿気をためず結露を起こさないよう家の中の空気を常に循環させる工法を取り入れています。

「工法については、家に2つの呼吸をさせる家づくりをしております。1つ目の呼吸は、家に通気層を設け、壁の中の空気の入れ替えを自動的に行うことで、家を健康的な状態にして長持ちさせるための気管呼吸です。2つ目の呼吸は、内装の壁を透湿性の高い自然素材を使うことで、普段の生活で生じる室内の湿気、匂い、化学物質などを、その通気層を通して屋根の棟から抜くために必要な皮膚呼吸です。」

 

イラスト_夏.jpg

(左は夏の通気のイメージ図。各通気口には、気温の変化に
応じて伸縮する形状記憶合金の特殊なバネを利用していて、
暑いと通気口が自動的に開く仕組み。そして夏は床下の冷え
た空気が壁の中を流れ、天井裏まで上った空気は、日差しに
よって暖められた屋根裏の暑さと共に屋外に排出。蒸し暑さ
を感じない快適な室内になり、エアコンの使用頻度を抑えら
れる。)
 

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(右は冬の通気のイメージ図。寒くなると形状記憶合金の特殊なバネが縮み、換気口が閉まって空気の流れが止まり、魔法瓶のように部屋を包み断熱性能の高い家になる。1年を通して換気口の開け閉めは気温によって自動的に制御してくれるので、電気も使わず家計にも環境にもやさしい。)

 また、壁材や壁紙についても湿気をためず空気をきれいな状態に保つ効果のあるものを使用していると原さんが教えてくれました。

「内壁材は調湿や消臭の効果もある自然素材のシラス壁やコットンクロスを採用して室内の空気をきれいな状態に保てるようにしています。また、木材は切った後も呼吸をして、調湿効果もあるので、人間と同じようにお家も呼吸することで、結露によるカビやダニも発生しにくい、住む人も建物も健康で長持ちする家になるという考えです。また湿気がたまらないので室内では常に快適に過ごすことができ、エアコン等の使用頻度も抑えられ家計にも環境にもやさしくなります。」

 

日本の伝統技能を生かした家づくり

 

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(自然素材100%のシラス壁と造作の木製建具で仕上げた室内)

2020年にユネスコの無形文化遺産に登録されることが決まった日本の「伝統建築工匠の技」。屋根瓦葺(やねかわらぶき)や左官、建具製作や畳製作などがあります。

「信州健康ゼロエネ住宅」では、このような伝統技能を活用した家づくりを推奨し、寺島工務店では外壁は主に自然素材のシラス壁、建具は職人による造作の木製建具を使用しています。そのメリットを原さんに伺いました。

「シラス壁とは、火山灰が粉末状になったものを職人が左官仕上げで塗っていて自然素材100%になります。耐久性が高く塗装も必要ありません。また、クロスの代わりに内壁にもシラス壁を使用することで、調湿効果が高まり室内に湿気などがたまらず、快適に過ごせる家づくりにつながります。」

造作の木製建具については、「基本的に建具は職人による造作になります。既製品ではないので、お家のデザインに合わせて建具を設えることができます。例えば、既製品だと柱と柱の間のここにしか扉を付けられないということがありますが、ちょっとずらしてこの位置に扉を付けるというように自由な設計ができます。また、床材などに合わせた木材建具にすることで統一感も生まれます。」と話します。 

 

高性能な断熱材+ソーラーパネルで光熱費を安く

ZEH(ネット•ゼロ•エネルギー•ハウス)ビルダーでもある寺島工務店。家庭で消費するエネルギーを抑えるため、断熱材は断熱性能が高く耐久力に優れたフェノールフォームを使用し、窓もペアガラスやトリプルガラスを採用して、「信州健康ゼロエネ住宅」に必要な断熱性能、UA値は0.5〜0.4以下になるよう仕上げています。

家庭での消費エネルギーが少なく光熱費を安く抑えることができます。

また、自然に室内を換気できる工法を用いて、壁材なども湿気や有害物質を排出してくれる自然素材にしているので、換気に関わる電気代も最小限で済みます。

さらに同社では主にソーラーパネルでの発電により、普段の生活にその再生可能エネルギーの利用を勧めています。化石燃料由来の電気に比べ二酸化炭素の排出を抑えられるため、環境にもやさしく、さらに光熱費も安くなるなどのメリットがあります。屋根の大きさにもよるそうですが、4kwh〜6kwhのソーラーパネルを載せることが多いという同社。
実際に5.6kwhを載せた家のお施主さんは「思ったよりソーラーパネルの効果があり、とても満足している。」と話していて、年間の消費電力5977kwhに対して発電電力量は7481 kwhだと教えてくれました。

 

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(ソーラーパネルを5.6kwh搭載した4人家族の家の年間の発電電力量と消費電力量のグラフ)

 

このように住まい手や住宅、環境にもやさしい「信州健康ゼロエネ住宅」は今後、ますます必要になると原さんは話します。

「最近は空き家の多さが話題にもなりますが、空き家を所有する方から『この家はまだ住めますかね?』と聞かれることも多いです。ですが実際に内覧すると何十年もたっていて木材が朽ちていたり、断熱材も劣化していたりと手を加えるより建て替えた方が良いのではという家がけっこう多いです。『信州健康ゼロエネ住宅』のように家の性能を上げて長持ちする家をつくることによって、お施主さまだけではなく、次の世代へも性能の高い家を引き継ぐことができ、日本の住宅の平均寿命も上がっていくと思います。」

 

【会社情報】
有限会社寺島工務店
長野市安茂里小市2丁目19番2号 TEL 026-227-5544
https://trsm-bco.jp/

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