Works事例紹介
伝統の町並みをゼロエネ住宅で守り繋いでいく
取材日:
川島宏一郎さん(50代) 真由さん(30代)
塩尻市木曽平沢地区で住宅改修を進める、川島宏一郎さん。建築設計の仕事に携わる中で、古民家の再生事業に興味を持ち、取り組むようになりました。現在は建築士として自ら住宅改修を手掛けるだけでなく、古民家や伝統的な町並みを守り続けるための提案を行っています。
【平沢地区での住宅改修】
木曽漆器の産地として知られる平沢地区。中山道や奈良井川が南北に縦断する市域南部の中央に位置し、河川敷に集落が発達しています。かつては、木曽漆器の販売店舗と漆器職人の住まいが一体となった、漆器の生産から販売までを行う建物が町並みを形作っていました。平成18年には、重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。
しかし現在は住まい手の高齢化が進み、空き家が増加。河川が近いため洪水災害も多く、その影響は古民家の崩壊にもつながっています。
建築士の川島さんは、文化的価値がありながら壊れていく建物を放ってはおけないという思いから、この地域で改修に取り組んでいます。
「塗蔵という、主屋の裏にある漆器の作業場があるのですが、この地域全体の手入れされていない塗蔵は洪水で崩れている状況です。私が改修して今住んでいるこの家の敷地内にも、昔4つの塗蔵が建っていましたが、1棟は崩れており、他も全て解体されてしまっていました。さらに母屋についても、元々のお施主さんが壊そうとしていたところでした。このまま誰も建物を守らなければ、この地域の文化財がどんどんなくなってしまう。それで私は改修と町全体を守る提案を続けています。」と川島さんは話します。
【自宅改修のこだわり】
現在川島さんが住んでいる自宅も、元々は漆器店でした。そこで文化財・古民家ならではの良さを残しながら、改修を進めたそうです。「通り庭」という、玄関から裏庭まで続く土間は、あえて残した設計に。元々の柱や梁なども生かせる部分は残しています。川島さん宅に入ると印象的なのが1階から2階まで続く吹き抜け。薪ストーブの暖かい空気を部屋全体に循環させています。
平沢地区は省エネルギー基準地域区分が「2」に該当し、冬は非常に寒く、断熱改修は必須条件です。川島さん宅では、キッチンの向かいにある窓は断熱性が高い「トリプルガラス」を使用。外気の気温が伝わりにくく、暖かい家を実現しています。外の通り沿いには、耐久性がある「アルミ」と断熱性や気密性に優れた「樹脂」を複合した、「樹脂アルミ複合サッシ」を使用していますが、玄関から続く部屋の手前にもう一つ部屋を挟むことで、さらに生活空間の断熱性を上げています。木材は近くの製材屋さんで売れ残っていた在庫の県産材を利用。環境に配慮した、無駄のない資源の活用にも取り組んでいます。
【平沢地区で「信州健康ゼロエネ住宅」を目指す意味】
10月末日。既に平沢地区は朝方も冷え込む気温になっていました。
「今日も朝は外気温が1度。この家の中は昨晩10時くらいに暖房を消して、そのまま放っておきましたが、それでも朝は18度くらいでした。起きてからすぐに薪ストーブを焚いて、少し経ったら23度くらいになっていました。すごく部屋の中の暖かさを感じていますし、そうした断熱性に配慮したゼロエネ住宅って心疾患とか脳出血とかになりにくいんですよ。健康に暮らすためにこの地域の改修では、ゼロエネ住宅を目指す意味があります。」と「信州健康ゼロエネ住宅」の必要性を川島さんは話します。
これからも川島さんは環境にも健康にも優しい「信州健康ゼロエネ住宅」で、平沢地区の町並みを守り続けていきます。