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世界基準のパッシブハウスで未来の地域を守る

取材日:

新築 東信
設計者

森みわさん(キーアーキテクツ株式会社)

建築家の森みわさんは、日本における「パッシブハウス」の第一人者です。パッシブハウスとは、夏涼しく冬暖かい快適さと世界基準の超省エネを両立した、ドイツ発祥の省エネルギー住宅の基準と設計メソッドのこと。 これまで数多くのパッシブハウスを手掛けてきた森さんが2022年、軽井沢町に自邸をつくりました。
高断熱・高気密を駆使し自然エネルギーを取り入れたデザインなど、魅力が詰まったパッシブハウスについて森さんに話を伺いました。

森みわさん

【パッシブハウスの特徴① 家ごとにオーダーメイドの設計】

自邸である「軽井沢・追分の家」は、森さんがこれまで手掛けてきたパッシブハウスの良さが最大限に表れています。
パッシブハウスは、建てる家ごとに土地の条件に合わせてオーダーメイドで設計することが大きな特徴です。
追分の家は、軽井沢の日照や気温などの気象データからエネルギー効率を分析。
窓の方位や位置は、設計段階で敷地の中にどれくらいの日射が取れるかを計算した上で配置しています。
冬は太陽高度の低い日射が窓を通して入ってくるように、夏は太陽高度が高いため軒や庇で太陽光を遮るように工夫しています。また、断熱材の厚みや窓のガラスの性能も全て環境条件に合わせてカスタマイズしています。

窓ガラス

外観

【パッシブハウスの特徴② 自然エネルギーの活用】

自然エネルギーを利用して最小限のエネルギーで快適に暮らせることもパッシブハウスの特徴です。
一般的な省エネ住宅は、断熱性や気密性を高めて冷暖房効率を上げ、室内温度を快適に保っています。一方パッシブハウスでは、それを設計段階で厳密に数値化して評価し、太陽光などの自然エネルギーを最大限に活用することで冷暖房設備に殆ど頼らない居住空間をつくっています。
追分の家では太陽熱温水器とペレットストーブを用いて自然エネルギーをお湯に変え、台所・風呂などの給湯に充てています。冷暖房エネルギーが極限まで減らされている設計のため、比較的消費量の多い給湯需要にも自然のエネルギーを使って快適にそして楽しく過ごしています。

ソーラーパネル

ペレットストーブ

【パッシブハウスの特徴③ 工夫された間取りとデザイン】

追分の家で森さんが一番気に入っているのは、開放的な空間のデザインです。断熱性や気密性によって部屋を締め切る必要がないため、開放的な間取りが実現できています。
1階は間仕切りの壁はなく、玄関やキッチン、リビングなどの空間が緩やかにつながっています。
視線が通りやすい一方で上手く視線が閉ざされたり、他の部屋にいる人の気配がわかったりと、適度な距離感やプライバシーを保つことができるデザイン。開放的でありながらも落ち着いた居心地の良さがあります。

室内

【一年を通して快適な暮らしを実現】

夏は涼しく、冬は暖かい暮らし。
特に夏場の快適性を感じていると森さんは言います。
「軽井沢は湿気が多いので、気密性がむしろマイナスになってしまうように感じる方がいらっしゃると思います。実際は逆に断熱性や気密性が威力を発揮して、少ないエネルギーで快適に過ごせます。」

戸の建て付け

戸の建て付け

冬場は冷えることがなく、隅々まで暖かい空間に。
「パッシブハウスは、ご高齢の方は朝起きるのが楽とかぐっすり眠れるといった声をよく耳にします。冷え性が解消された、活力が湧いてくるなんて声も聞きますね。家庭内で活動的な人が増えると、みんなで家事を分担すればさらに楽しく暮らせるのかなと思います。」と笑って話す森さん。
パッシブハウスは、健康で充実した暮らしを実現しています。

キッチン

【パッシブハウス普及のメリット】

パッシブハウスのようなエコハウスを求める人の中には、地域に密着した工務店や職人に施工を頼んだり、地元の県産材や燃料を使ったりして、地産地消の家づくりを望む人が増えているそうです。
「自分たちがいかに安く快適に過ごすかではなく、将来的な資産価値や次世代の地域を考えた家づくりをすることが重要だと思います。初期投資は普通の家よりも高くなってしまうかもしれませんが、長い目で考えた時に地域を守るという視点につながっていけばいいなと思います。」と森さんは言います。

外観

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