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省エネルギーで健康的に暮らすための信州健康ゼロエネ住宅

取材日:2023年7月16日

省エネルギーで健康的に暮らすための信州健康ゼロエネ住宅
新築 北信
施工会社

山本建設株式会社

本記事は、長野県が信州健康ゼロエネ住宅建設における事業者の方々の取り組みを取材したものです。

低燃費住宅専門の山本建設が、長野市に新しく建てた家は「高断熱高気密でソーラーパネル搭載」。おかげで夏は涼しく、冬は暖かく暮らすことができるうえに、光熱費は安く、健康にも家計にもやさしい造りになっています。さらに家庭で使用するエネルギー消費が少ないため、CO2排出を削減し、温暖化防止にも貢献します。これは、長野県が目指す脱炭素社会に向けた住宅分野のモデル「信州健康ゼロエネ住宅」のコンセプトにも通じます。

信州健康ゼロエネ住宅は、4つのメリット「光熱費が安い」「健康で快適」「災害にもしなやか」「豊かな暮らしを実現」が特長です。

 

ゼロエネルギー住宅とは

社長補正画像

(ゼロエネルギー住宅のメリットについてお話しいただいた山本建設の山本社長)

家庭で消費するエネルギーと生産するエネルギーが実質、プラスマイナスゼロになるのがゼロエネルギー住宅です。
具体的に、山本さんはこう説明します。

「例えば、100のエネルギーを使う住宅の場合、100のエネルギーを生む装置を付けます、そうすると差し引きゼロですよね。だけど、100のエネルギーを使う住宅ではなく、使用するエネルギーを50とか30、15の消費量に少なくした家にして、そこに100のエネルギーを生む装置を付ければ世の中にエネルギーを配れ、利益も出ます。」
さらに、停電時にも発電したそのエネルギーを自分の家で使うこともできます。

国の目標としても2050年の脱炭素社会に向け、2030年に新築住宅のゼロエネルギー化を進める方向です。そうして日本中の住宅で消費するエネルギーが減れば、日本国内の消費エネルギーも減り、現在国内の発電量の7割を占める火力による発電も減らすことが可能で、国や県が目指す脱炭素化社会に近づきます。

 

住宅の省エネルギー化に必要な高断熱高気密化

もともと100のエネルギーを消費していた家を50や30にするには、住宅の高断熱高気密化が必要になり、高断熱を示す断熱性能は、国の指針としてUA値という数値で示されます。

(※UA値=どれくらい熱量が家の外に逃げやすいかを表す数値。長野県の推奨する信州健康ゼロエネ住宅ではUA値0.5〜0.4を最低基準としている)

「UA値が低ければ低いほど熱が逃げにくい住宅で、この家のUA値は0.24です。」と山本さん。

このUA値は、家の断熱材を厚くしてさらに、熱が逃げないような窓(開口部、サッシ)にすることで高断熱になり、下がります。
そして熱が逃げないように、窓ガラスはできればシングルではなくトリプル(3層ガラス)を使いたい考えの山本さん。そうすることで、UA値が、0.24、0.23、0.21とだんだん下がっていくといいます。

 

部屋の温度を快適にするパッシブデザイン

山本さんが住宅を造る時は「パッシブデザイン」というドイツで確立された建築デザインが基本です。パッシブというのは「受け身」という意味で、一言でいうと「太陽光をコントロール」するということ。
「冬は寒いから日射をなるべく入れましょう」「夏は暑いから日射を入れないように庇(ひさし)をつけて造りましょう」ということが目的です。

パッシブデザインについて山本さんは、南側の大きな窓を指し、「この家で言うと、太陽光が窓ガラスから入ってきていないのが分かりますか?窓の外、ウッドデッキの上の庇を出しているので、窓の外に陰ができています。庇が太陽の熱をさえぎり、夏は部屋の中が暑くならないという効果があります。」と説明します。

遮蔽パッシブ

(7月午前10時撮影。外気温31度、室内24.7度。南に庇(ひさし)を出しているので、窓の外のウッドデッキ側で陰になり日差しが入らない。)

パッシブデザインで太陽光をコントロールして、夏、家の中の温度が上がっていかなければ冷房するエネルギーは小さくて済みます。そうするとこの建物(28坪)なら、6畳用のエアコン1台でこの環境がつくれます。外から室内に熱が入ってきたらこの快適な環境はつくれないということです。

「だけど冬は太陽光を取り入れたい。長野県は日本でもトップクラスの日射量の多い地域なので、冬は南の窓を大きくして日射を入れて部屋の温度を暖かくしましょう。」と続ける山本さん。

そうすると太陽の熱で部屋が暖まり、暖房は少なくて済み、それが低燃費、さらにゼロエネルギーにつながるということです。

ただ、パッシブデザイン(太陽の熱をコントロールする)だけで、UA値(どれくらい熱が逃げやすいか)が高ければ、室内に熱がたまっていてくれないので、高断熱高気密でないと、低燃費住宅はできません。

 

山本建設様データ1

山本建設様データ2

(新住協の「Qpex」で山本建設が建てた「信州健康ゼロエネ住宅」推奨基準の家(延床面積:98.53平方メートル=28坪)を温熱計算した結果。間取り、立地などの同条件で、一次エネルギー消費量を省エネ基準レベルにすると年間冷暖房費16万5,762円に対し、「信州健康ゼロエネ住宅」推奨基準の家だと年間冷暖房費が5万1,169円となり、かなりお得。

 

ソーラーパネルを載せる時の考え方

ソーラーパネル

(ソーラーパネルを載せ創エネすることもゼロエネ住宅の特長)

新築でソーラーパネルを載せる時の枚数は、建物や屋根の大きさ、建物の向きにもよります。そこに建物のUA値(断熱性能)を出して、UA値が出たら次は一次エネルギー消費量の計算をします。そうすると「この家は、ソーラーパネル20枚でゼロエネルギーになります。」と答えが出るということです。

(※「一次エネルギー消費量」とは、住宅で使われている設備機器のエネルギーを熱量に換算した値のこと。 冷暖房だけではなく、換気や給湯、照明なども含めた合計の値を、一次エネルギー消費量と呼ぶ)

このような高断熱高気密の家に、ソーラーパネルを載せるとゼロエネルギー住宅が出来上がります。
ただ高断熱高気密化やソーラーパネル設置には費用がかかりますので、その分を長野県は昨年度より「信州健康ゼロエネ住宅」を造るときの助成額を最大150万円から最大200万円に上げています。

 

健康面へのメリット

「一番わかりやすいのは、ヒートショックの防止にも効果があるということです。」と山本さんは話します。

室内で温度差がある場合、ヒートショックが起きる可能性がありますが、高断熱高気密の家の中では、熱が逃げませんので、部屋と部屋の温度差がなくなります。
例えばお風呂に入るときに、25度の暖かいリビングから10度の寒い脱衣所に移動して40度のお湯に入る場合、そこでヒートショックになる場合があります。
ですが、家の中で温度差がなければヒートショックの起きる可能性は小さくなると言います。
血圧の安定に関しても、温度差がないと安定するといわれています。暑い所にいったり、寒い所にいったりすると血圧も高くなったり、低くなったりするためです。

 

高断熱高気密の家は、冷暖房時の負荷が少なくすむため、エアコン1台で家中の温度を一定に管理できるメリットもあり、健康にも家計にもやさしい暮らしを実現できるのです。

床下エアコン

(この住宅は28坪で、6畳用のエアコン1台で全館空調管理をしている)

 

【会社情報】
山本建設株式会社 
長野市篠ノ井御幣川598 電話:026-292-0938
https://www.yama-kk.com/(別ウィンドウで外部サイトが開きます)

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