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雪国のパッシブStyle

取材日:

雪国のパッシブStyle
新築 北信
施工会社

松村デザイン建築事務所

本記事は、長野県が信州健康ゼロエネ住宅建設における事業者の方々の取り組みを取材したものです。

長野県北部、飯山市、野沢温泉村、山ノ内町、栄村など豪雪寒冷地域の家づくりで多くの実績がある松村デザイン建築事務所。10年前、「寒い家は絶対につくらない」と決めてから冬は暖かく、でも夏は涼しい、高断熱高気密の家づくりをしています。
また、快適な住環境づくりのための設計、パッシブ設計を得意とし、部屋と部屋の温度差のない快適な空間に仕上げています。さらに創エネをすることでエネルギー使用量が実質ゼロになり、2050年ゼロカーボンに向け長野県が推奨する「信州健康ゼロエネ住宅」に適合します。

長野県では住宅分野におけるゼロカーボン実現に向け、「信州健康ゼロエネ住宅」の普及•促進のため、その指針に適合する県産木材を活用した住宅の新築•リフォーム費用の一部を助成、新築では最大200万円を受けることができます。

色補正1.jpg

(「信州健康ゼロエネ住宅」のメリットについてお話しいただいた松村デザイン建築事務所の松村社長)
 

部屋と部屋の温度差がない健康で快適な家造りに必要なこと

「建物や住む人の健康を考えて家をつくると「結露させない」とか「温度差をつくらない」とか、そういう家づくりになるんですが、そういう家での暮らしは省エネルギーで済むんです。」と話す松村デザイン建築事務所の社長、松村さん。

そのためには住宅を高断熱高気密でつくる必要があります。外壁や屋根の断熱材の厚みだけではそのような省エネルギーの家はつくれなくて、防湿と気密も重要になるといいます。
家の外の寒さや暑さの影響を受けにくくするということで、まず基本は断熱ですが、次は室内の熱を逃がさないということで「気密」が必要になります。そして壁の中に暖かい湿った空気によって壁内結露を起こさせないためには「気密」と同時に「防湿」も必要になるとのこと。

気密が取れていないと天井から暖かい空気が逃げて、床下から冷たい空気が入り、温度差ができて結露します。あとは計画的な換気もできなくなるので、断熱気密をちゃんと施工すると室内の温度差がなくなり、結露防止にもつながります。

温度差のない家では、冷暖房時の消費エネルギーが自然と少なくなります。

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(実際に小布施町にソーラーパネル搭載、高断熱高気密の家を建てた4人家族の年間光熱費と太陽光発電のグラフ)

 

住環境を快適にするためのパッシブ設計

イメージ図.png

(パッシブ設計のイメージ。夏は庇を出して日差しを遮蔽、冬は南の窓から日差しを入れ暖める。また風の通りをよくすることも重要。)

パッシブ設計は、住環境先進国ドイツで確立された設計手法で、室内を快適な温度にするのが目的。太陽の日射や自然の通風をうまく住環境にとり入れます。

具体的には「夏は南側に庇(ひさし)を出して日差しをシャットアウトし、室内を涼しく」「冬は太陽高度が下がるので南の窓から日射を多く採り入れ家の中を暖める」ための設計で、窓が特にその効果に影響します。
自らドイツでパッシブ設計を学んだ松村さんは、窓の重要性について次のように説明します。

「南の窓はとにかく大きくして冬は日射を採り入れる、東西北の窓は明かり採りと通風です。パッシブ設計を重要視しすぎて南にしか窓をつくらなかったり、風通しするところしか窓をつくらないと、冬は暖かくて夏は涼しいかもしれないけれど、室内が暗くなったり、豊かな暮らしにはならないです。窓はいろんな要素があるので、日射を採り入れることのほかに、明るさと通風にも関係します。家を高気密高断熱でつくることに加え、自然の太陽光や風をとり入れるパッシブ設計が住環境をさらに快適にします。」

夏は家全体の約73%の熱が窓から入り、冬は家全体の約58%の熱が窓から逃げていくといわれています。窓を強化すると断熱効果が高くなり省エネにも影響します。

熱流出入図1.jpg

 冷暖房時の開口部からの熱流出入割合
(出典:一般社団法人日本建材•住宅設備産業協会)
(参考:全国地球温暖化防止活動推進センター)

 

家計と地球にやさしい再生可能エネルギー

太陽光発電システムや木質バイオマス暖房設備といった再生可能エネルギーは、温室効果ガスを排出しないため環境にやさしく、光熱費も抑えられるので「信州健康ゼロエネ住宅」には必要な要素です。特に年間の日射量の多い長野県は太陽光発電に適している地域でもあり、松村さんの考えを伺いました。

「売る分ではなく、ご家族が使う分の電気代を考えてソーラーパネルを載せましょうといつも言っています。5年以上前だとソーラーパネルはたくさん載せた方が利益は出ています。時代が変わって電力の買い取り制度とか廃棄のことを考えるとお客さまにとってリスクもあるわけですよね。」
投資のように考えるより、家族が使う分のエネルギーを発電して使うことを勧めています。また、万が一の災害時も発電している間は利用ができます。


今後は時代の流れを見ながら蓄電池を視野に入れていくことも重要です。

日射1.jpg

(全国の3カ月日射平均データ。長野県は夏期、冬期ともに日射量が多い。)

 

安心•安全なくらしのため、耐震等級3を推奨

「せっかく『信州健康ゼロエネ住宅』を建てても家が家族の命を守れなければ本末転倒ですので、最優先で必ず耐震性能は必要です」と松村さんは話します。

地震に対する建物の強度を示す指標のひとつに「耐震等級」があり、住宅の性能表示制度を定める「品確法」に沿って制定されたものです。建物の耐震性能によって ランクが3段階に分かれており、その数字が大きければ大きいほど、建物の耐震性能が高くなります。
「耐震等級1」は、建築基準法で定められた、建物に備わっているべき最低限の耐震性能を満たしていることを示すものです。
「耐震等級2」は、耐震等級1の1.25倍の耐震強度があることを示しています。「長期優良住宅」として認定されるには、耐震等級2以上の強度を持たないといけません。
「耐震等級3」は、耐震等級1の1.5倍の耐震強度があることを示しています。住宅性能表示制度で定められた耐震性の中でも最も高いレベルです。

このような耐震性能の考え方に加え、長野県でも北の積雪地域は、積雪加重も計算に入れないといけません。松村デザイン建築では耐震等級3が標準仕様。積雪地域では積雪加重も考えて、飯山市より北は標準で耐震等級2、もしくは3をつけるといいます。

長野県の推奨する「信州健康ゼロエネ住宅」でも、耐震性能の向上により、良いものを長く使い続けられるようになっています。

 

【会社情報】
松村デザイン建築事務所
長野県下高井郡野沢温泉村大字前坂8466 TEL 0269-85-2493
https://www.mkd-house.com/

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